所長メッセージ

スポーツ医学研究センターの今後の展望:第3のアクシスに向けて

 当センターは,1989年,その後のわが国におけるスポーツ医学への要求の高まりを見越し,これを慶應義塾が先導するために設立された施設です.これまで,アスリートのサポートと健康増進・予防医学を2つの軸に,研究,教育,臨床活動を行なってきました.
 塾内では,2017年に創立125年を迎えた体育会は,学生数が全学生の10%を越えており,体育会学生のサポートは,大学の施設である当センターにとって,ますます重要な使命となっています.また,塾外では,2020年東京オリンピック・パラリンピックのほか,種々の競技団体の医学的サポートで大きな貢献を果たしています.
 一方,健康増進・予防医学の分野では,大学病院のみならず,塾外の地域や職域の集団を対象に多くの活動を展開しています.アスリートの障害予防・競技力向上や,健康増進・予防医学の分野における研究成果の発信は,今後数年間の当センターの重点課題であり,集中的に注力してまいります.
 近年は,ビッグデータ,ウェアラブルセンサー,AI(人工知能),クルマの自動運転,オムニチャネルなど,テクノロジーの進展とともに社会の枠組みが急速に変化し,当センターもこれらに関連した活動が増えています.こうした変化はそれ自体が新しいプラットフォームとなり,人々の身体能力や健康に寄与する可能性を有するものです.当センターは,機動性のある組織の特性を生かし,大学外の多様な分野の企業とも連携を進め,アスリート・健康に加えた第3のアクシスを目指した活動を進めます.
 2018年,スポーツ医学研究センターは設立30年目の節目の年を迎えます.医師5名,専属スタッフ4名の小さな施設ですが,問題意識の禁欲はせず,広い領域を対象に捉えた活動を進めてまいります.

所長 勝川史憲(スポーツ医学研究センター・教授)

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